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きれいな白髪を丁寧にまとめたおばあさまは、うぐいす色のソファーに横たわっていました

3人掛けの長椅子で、両端に木製のひじ掛けがついています
彼女はワンピース姿で右肩を下に体を横たわらせています

その膝元には５歳くらいの男の子と女の子がいました

彼らはおばあちゃまが大好き
おばあちゃまも２人が大好き

彼らはただ目を見つめあってコロコロ笑っています

思えば幸せな人生だった

孫は他にもいるけれど、父の哲学を次の時代に伝えてくれるのはこの子たちだ

自分の死期はそう遠くはない
振り返ってみれば、いろんなことがあった

父の失墜から懸命に前に向かって走ってきたけれど
ひとりの人間が一生の間に達成できることは、そう多くはない
誰もが世界を変えるような偉業を成し遂げるのでもない

でも、これでいいのね
精一杯やった
想いは脈々と次の世代に受け継がれる

とても満足で安らかな気持ちでした

東の大国の統治下に入ってから村は急速に発展し、
人々の生活は物質的にも技術的にも豊かになりました

私自身も大国のもつパワーやそこに集まる知恵に目を見張り、多くを学び、
人々の幸せのために働きました
東の大国の中にも尊敬できる素晴らしい人物がいました

城を明け渡した頃は石畳の道など一本もなかった村は、
今では現代とそう変わらない服装の人々が行き交い
街の中心部には街灯さえ立っていて、馬車が何台も走っています

街の人口も増えました

子供の頃の「田舎の村」の面影はもうありません
私の生涯の間にヨーロッパの中でも有数の都市に発展していました

急速な富の増大や経済発展に伴い、弟や自分の子供の中にさえも
物質的な豊かさやお金だけを追い求める者がいて、
苦々しく思うことも、正直少なくありませんでした

夫は大国出身の長官という立場もあって
最後まで私や父の信念を公に支持することはありませんでした

しかし彼の取った政策には私の提言が盛り込まれることが増え
市民の支持も高く、生涯この街の行政長官を務めました

彼を通して私も行政の長の右腕として活躍でき
街の人々のために尽くす機会に恵まれました

つねに市民の意志や自由を尊重し、知性を信じ、
彼らの命と暮らしを守ることを第一とした父の政治哲学に
夫は心の中で少しずつ敬意を持つようになりました

「、、、では終に人生が終わる場面をみてみましょう」（←たんたん先生です　お忘れなく）

穏やかな笑顔を浮かべて終に息を引き取ります

するとその瞬間、左斜め上からレモンイエローの非常に強い光が差し込みました
力強い圧倒的な光です

光源は遥か高い場所です

「レモンイエローの光が見えます」

「その光の存在は誰だか分かりますか」

「マリアさまです」

「この人生において一番大切だったことは何ですか？」

「、、、愛、、、、博愛です」

「それでは、その博愛の想いを小さな光の玉にしてみてください　

そして、

その光の玉をレモンイエローの光の存在に渡してくださいね」

「はい、、、、渡しました」

「どうなりましたか？」

レモンイエローの光が一瞬にして薄い水色の鋭い圧倒的な光に変わりました
光源は左上ではなく真上で、さっきより更に遠く、高い感じがしました

「水色の光に変わりました」

「その光の存在は誰だか分かりますか」

「イエス・キリストです」

「、、、お墓を見に行ってみましょうか」

彼女のお墓は、街を見渡せる丘の中腹にありました
ここから眺める夕日は毎日本当にきれいです
眼下には山と山の間の谷間のような地形が広がり、谷に沿って街が発展しています

街の中心にはヨーロッパらしく教会があって、
この距離から見えるほど高い塔が立っています

「どこだか分かりますか」

すぐに昔学校で習った「最後の授業」という小説が心に浮かび
その舞台となった地域の名前が浮かびました

フランスとドイツという大国の運命に翻弄されたこの地域は
ある日突然フランス領からドイツ領に変わり
フランス語の教師が「最後の授業」を行う、というお話です

「アルザス・ロレーヌ地方、、、」

「西暦何年でしょうか？」

（１５０６）

なぜか４ケタの数字が浮かんだけれど、
さっきの街の人たちの服装とか、馬車や街灯をつくるための技術力とか、
ついうっかり頭で考え始めました

産業革命っていつ頃だっけ？　　　　　（←全然思い出せない）

フランス革命って何年だったっけ？　　（←全然思い出せない）

、、、、、

あたしって日本史選択だったじゃん！　（←思い出してもあまり意味がない）

じゃあ応仁の乱って何年だっけ？！　　（←結局これも思い出せない）

なぜ応仁の乱、、、？

、、、、（サイテーだな）

色々アタマで考えだしたらまるで自信がなくなり
しかも全然思い出せないし（マジメに受験勉強しなかっただけですが）
めちゃくちゃ幅の広い答えをしてみました

「１４世紀から１６世紀、、、かも！」（←語尾だけ根拠なく強気）

「では今生涯を終えた女性に、そして光の存在に、
ありがとう、という感謝の気持ちを伝えてください

そして、また会いに来ます、と伝えてください」

わたしは心の中で深い深い感謝を伝えました

「それでは、ゆっくりとご自分の意識を戻してきて
準備ができたな、と思ったら目を開けてください　　
ゆっくりでいいですよ」

何度か深呼吸をして、ゆっくりと目を開け、体を起こしました

私の目から涙が一筋流れました