2012年4月13日金曜日

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天気予報の仕組み

興味ある目次をクリックしてください。

天気予報関連のサイト

(1)天気予報の始まりから数値予報まで

(2)天気予報を支えている気象観測

(3)天気図にあらわれる気圧配置の名称と前線・低気圧

(4)天気予報の種類

(5)季節予報にも数値予報が

 

天気予報関連のサイト

 気象,地震,火山,気候変動などを簡潔に解説しているサイト;気象庁が自信を持って解説しているサイトで,天気予報について知るのにも最も便利なページです。タイトルにあるように,気象庁が関係している気象以外の自然現象について も,その科学的根拠を簡潔に解説してあります。

 『天気予報ができるまで』のサイト; 開けなかったら,下記の仙台管区気象台のホームページを開いてから入ってください。

  仙台管区気象台のホームページ;気象庁関連の全ての情報を見ることができます。『話題の宝庫』には『天気予報ができるまで』を説明しているホームページもあります。レーダー観測,気象衛星観測をクリックすると,現在までの雨雲や台風の動きを動画として見ることができます。

 気象観測ガイドブック;気温・湿度,風向・風速,降水量等の測定機器の説明と,適切な観測に必要な環境条件や測器(測定器)の点検のポイントについて,図・表・写真などにより解説している。

 国土交通省の『川の防災情報』ホームページ;「全国のリアルタイム雨量・水位などの情報を提供」している,も気象災害関連情報として,非常に参考になります。サイトのアドレスは下記で,クリックすると開けます。

 気象人;気象専門の Web マガジン;気象ダイアリーなど,毎日の天気図や,月ごとの天候のまとめ,毎月の気象関係の暦など,面白い記事もある。

 天気図(国際気象海洋(株));地上と高層(850,700,500,300hPa)の最新の天気図と,地上の24時間・48時間予想天気図が入手できます。

専門的な天気図(HBC Weather お天気情報);プロ使用の天気図が入手できます。地上と高層(850,700,500,300hPa)の最新の天気図と,地上の24時間・48時間予想天気図 など,専門家が使用する情報が提供されています。専門天気図アーカイブをクリックすると,2週間前までの天気図も見られます。

専門的な天気図(Weather eye);実況天気図と予想天気図,波浪図も見られます。

 

 過去の天気図;1995年 1月1日から2001年12月31日までの毎日の天気図が入手できます。

インターネット気象学;インターネット上で気象情報を提供している国内,海外の主たるサーバをほとんど網羅しています。

 

(1)天気予報の始まりから数値予報まで

 天気予報は,17世紀初めにE.トリチェリーが気圧計を発明したことに始まったといわれています。いろいろな地点での気圧測定から,気圧が急激に低下すると暴風雨になることがわかり,天気の変化を科学的に予測できると考えられたのです。世界中で気圧の観測が始まり,集められた気圧のデータを地図の上に記入してみると,大気の振る舞いが見えてくることがわかり,天気図が作られるようになったと伝えられています。

<古典的天気予報>

通信技術が進歩し,短時間で観測データを収集することが可能になると,毎日決まった時間に天気図がつくられるようになった。天気図の時間変化を調べ,外挿法で作成した予想天気図に基づく天気予報(古典的天気予報)が始まったのです。日本で初めて天気予報が発表されたのは1884年(明治17年)6月1日で ,内容は「全国一般,風の向きは定まりなし,天気は変わりやすし,ただし雨天勝ち」という非常におおざっぱなものでした。

 広い範囲で観測した気象要素(気温・風・気圧)を地図の上に記入して作成した天気図の時間変化と,ラジオゾンデで観測した上層の気象要素を用いて作成した上層天気図 の時間変化や「エマグラム(大気の状態や雲の発生・消滅などの手がかり等が得られる)」の時間変化を考慮した予想天気図を作成し,地域の天気の特徴を把握している予報官の経験を加味した,いわゆる「主観解析」による天気予報でした

 @地上解析当時の予報官が最も神経を使った,低気圧と前線の移動に伴う降雨域の異動の様子を図1.1に示しました。天気予報では,天気を大きく崩す原因となる天気図上の低気圧や前線の変動や動きが注目されたのです

 過去の天気図から低気圧や高気圧の移動経路(実線)を調べ,将来の経路(白抜き線)を予測する概略を示したのが図1.2です。これに予想される低気圧や高気圧の盛衰を加味した予想天気図を作成し,天気予報が発表されたのです。

 このような方法で予想天気図が作成されていた時代には,何年にもわたる天気図の解析から気圧系の移動速度(表1)や移動経路の特徴(図1.3)などが調べられ,予想天気図の作成に活用されていたのです。

 表1 気圧系移動速度の季節変化(km/s)

月  

  

2  

3  

4  

5  

  

  

  

9  

10  

11  

12

高気圧  

53  

50  

54  

49  

44  

40  

31  

41  


どのように氷河がフォルムです。

45  

45  

51  

54

低気圧  

45  

42  

45  

42  

38  

31  

29  

28  

30  

34  

40  

46

前線  

35  

19  

23  

21  

15  

10  

9  

9  

19  

23  

30  

23

降雨域  

33  

35  

38  

35  

34  

25  

14  

21  

27  

29  

38  

35

  大きな高気圧に覆われているときには, 24時間後(翌日)の予想天気図を作成するのは,あまり神経を使う必要も無いのですが,低気圧が存在しているときには,低気圧の盛衰の予測も必要ですし,前線があるときには,前線の移動に加えて,前線活動が活発になるのか,衰えるのかの予測も必要 です。

 加えて,台風が接近しているときには,台風情報も取り入れる必要があります。このような気象状態のときの予想天気図を作成するためには,何枚もの天気図の変化を注意深く解析することが求められるのです。

 A高層解析雲が発生・成長し,降水をもたらすのは上空であり,地上天気図の気圧系の移動を支配しているのも,上空全体の空気の動きなので,天気を理解するためには,どうしても上空の状況を知る必要があり,高層の予想天気図を作成することは非常に重要なことなのです。

  このため気象庁では全国18ヶ所に高層観測所を設置し,ラジオ・ゾンデと呼ばれる観測装置を使った,上空の大気状態の観測と,気象レーダーを使った雨雲や降水・降雪の観測を行っているのです。レーウイン・ゾンデで観測した気温の高度分布を「断熱図」にプロットし,解析した例を図1.4に示しました。

 図の中の「成層大気の温度」が観測値を表しています。「持ち上げた空気塊の温度」は,地表付近の気温と湿度をもった空気が上空に運ばれると仮定して,断熱図を利用して求められる理論的温度分布です。

  地表付近の空気が上空に運ばれると,「凝結高度」で飽和に達し,それより上空では雲が発生することを教えてくれています。観測値(「成層大気の温度」)と理論値(「持ち上げた空気塊の温度」)が交わる高度(「自由対流高度」)より上空では理論値のほうが観測値よりも高温になってい るので,<もし,地表付近の空気が「自由対流高度」まで強制的に上昇させられると,それより上空では勝手に上昇するため,非常に背の高い積乱雲が発生する>ことが読み取れるのです。

地表付近の空気を強制的に上昇させるのは,低気圧,前線,高い山の斜面に吹き付ける風などです。高層気象データは,この他に,高層天気図の作成,雲の発生している高度や,大気状態の安定度を知るためなどに活用されています。国内18箇所の観測データのほかに,海外からも高層気象データを集め,天気予報に利用しているのです。

<新しい天気予報―数値予報>

大気物理学の研究が進んだことに加え,大量のデータ処理ができる大型コンピューターが開発されたことにより,現在はスーパーコンピューターで将来の大気の状態を予測する数値予報にとって代わられています。アメリカでは1955年に実用化され,日本でも1959年に実用化が始まっています。

数値予報は,大気の状態を表す沢山の物理量の時間変化をコンピューターで計算する手法なので,大気を3次元の規則正しく並んだ細かい格子で分割し,世界中から送られてくる気象データを使って,一つ一つの格子点の気圧,気温,風などの初期値データを作成することから始まります(図1.5a,b)。このデータをもとに,予報の種類にあった「数値予報モデル」を用いて将来の大気状態の時間変化をスーパーコンピューターで計算するのです。

  世界中から集められた気象データを解析して,天気予報が発表されるまでの流れを,フローチャートにまとめました。


danvipトップ

   

数値予報を行う手順として,上に示した「フローチャート」を簡単に説明しておきます

国内外からの膨大な気象データが,オンラインで「気象資料自動編集中継装置」に入力されてきます。入力したデータは直ちに「気象解析中枢電子計算機」に送られ,規則正しく並んだ三次元の格子で細かく覆われた,ひとつひとつの格子点の気圧,気温,風などの初期値(現況値)が計算されます。この初期値を用いて,ひとつひとつの格子点における将来の気象状況の推移をスーパーコンピュータで計算します。計算値を 用いた予想天気図を作成し,計算結果と一緒に, 管区気象台などに自動的に送られています。管区気象台では,各地方の気象特性を加味した検討を加味し,その結果も含めて地方気象台や,マスコミなどに送り,天気予報が発表されているのです。この計算に用いるプログラムを「数値予報モデル」と呼んでいます。

主な数値モデルの概要を表2にまとめておきました

表2 主な数値予報モデルの概要
予報モデルの種類
モデルを用いて発表する予報
予報領域と水平解像度
予報期間
実行回数
メソモデル
防災気象情報(警報,注意報)
日本周辺 10km
18時間
1日4回
領域モデル
府県天気予報,分布予報,時系列予報 
東アジア 20km
2日間
1日2回
台風モデル
台風予報
北西太平洋の台風周辺 24km
2日間
1日4回
全球モデル
府県天気予報,週間天気予報
地球全体 55km
3.5日間,9日間
1日1回
アンサンブル週間予報モデル
週間天気予報
地球全体 110km
9日間
1日1回
1か月予報モデル
1か月予報
地球全体 110km
1か月
週1回

<古典的な天気予報と数値予報との違い

古典的な天気予報では,観測した気象データを用いて作成した地上・高層天気図を解析し,地上と高層の予想天気図を作成していたのです。予想天気図を作成するためは,大気の立体構造まで把握できる熟練した予報官の力が必要・不可欠 でした。また,予想天気図から,地域ごとの天気を予測するためには,低気圧が発達するのか衰弱するのかや前線活動は活発になるのかの判断のほかに,地域ごとの地形がどのように 天気に影響するのかなど,予報官の専門知識に加えて豊富な経験が必要とされたのです。

これに対して,数値予報の方は,予報官に頼ることなく,規則正しく並んだ三次元の格子点に入力された初期値に基づいてコンピューターが客観的,かつ合理的な方法で将来の大気の状態(気圧,風,気温,水蒸気量などの空間分布)を予想し,同時に予想天気図まで作成してしまう,いわゆる「客観解析」です。

初期値に誤差が含まれていると,一般的には,計算を続けていくほど誤差も大きくなるため,『明日の予報』に比べ,1週間後の予報の方がはるかに大きな誤差を含むという欠点もあります数値予報で予報時間を延長していくと,誤差が増大し,予報精度が落ちる 例を示したのが図1.6です。ある年の1日の地上気圧の初期値にごく僅かの誤差を含んだ例(実線,点線,破線)について,60日間の数値予報を行った結果を示したものです。 

最初のくらいは,本の線はほとんど重なっていますが,計算時間が長くなるにつれ, 3つの線は大きく違ってます。そのため,週間予報までは数値予報は可能だが,季節予報は無理ということで,平成8年までは,数値予報以前と同じように,過去のデータを統計学的に処理し,それに基づいた予報が行われていたのです。

 数値予報モデルには,山岳などの地形の影響,太陽からの放射,地表面の摩擦,大気と地表面の熱や水蒸気の交換、雲の生成・消滅や降水など ,気象に影響すると考えられている,全ての物理量が考慮されています。
 こうした数値予報モデルを用いて計算された結果は,数値予報天気図や格子点値として出力され,民間気象会社や報道機関に提供されているほか,外国の気象機関にも利用 できるようになっています。

 図1.7に示すように,数値予報モデルには,水蒸気が凝結して雨が降ること,地面が太陽に暖められたり冷やされたりすることはもちろん,地形や植生にいたるまで,気象に影響を及ぼすと考えられる,さまざまな現象が考慮されているのです。

 「天気」を支配する気象要素,「@晴れ・曇り・雨、A暖かい・寒い、B風が強い・弱い」を支配するのは何かについて,お天気入門 にわかりやすく解説してあるので,そちらも参照してください。

 (2)天気予報を支えている気象観測

天気予報の基本は大気状態の時間変化を追跡し予測することですから,大気の状態がどうなっているのかを正確に知ることが最も重要なことです。そのために地球規模で,地上観測から人工衛星による観測に至るまで,常時挑戦は続いているのです。気象庁で行っている観測の概略を図2.1に示しました。         

     

              図2.1 気象庁で行っている気象観測の概略


大恐慌に関する情報]

<地上気象観測>;気象台(57ヶ所)と測候所(100ヶ所):気圧,気温,風向・風速,降水量,雲,視程等を観測しており,地上天気図を作成するためのデータを提供している。

アメダス(Automated Meteorological Acquisition System:約1300ヶ所):自動的に観測・送信する無人の観測所。このうち,約840ヶ所(約21km間隔)で気温,風向・風速,日照時間,降水量を,降雪地帯の約200ヶ所で積雪の深さも観測。残りは降水量だけを観測している観測データは全てオンラインで,気象庁に送られるようになっている。

<海洋気象観測>;観測船(5隻)と気象ブイ:西太平洋および日本周辺海域における海洋観測と海上気象観測気象ブイによる気圧,波浪,水温などの観測を行っている。そのほか,商船・漁船などの協力を得て気象データを取得している。

<高層気象観測>

(a) レーウインゾンデ(18ヶ所);上空の大気の状態を知るために,図2.2に示すように,観測機器と観測データを地上に送信するための装置を風船で飛揚させ,高度約30kmまでの気温,気圧,湿度,風向・風速を観測する。風船に詰めるガスの量を調整して,目的高度(〜10hPa)に達すると風船は破裂し,パラシュートが開くようになっており,観測機器は風に流されながら地上に落下するようになっている(図2.3)。

 

(b) 気象レーダー(20ヶ所);

気象レーダーの原理は,アンテナから発射した電波が,雲中の雨粒や雪片に当たって反射してくる電波を受信することによって,降水や降雪の強さや降水域の広がりなどをリアルタイムで把握する装置です(図2.5)。降水や降雪の強度は反射波の強さでわかるし,観測地点から降水地域までの距離は電波を射出してから反射波が受信されるまでの時間差から計算でき るのです。

連続して観測すると,降水(降雪)強度の時間変化や降水域がどのように移動しているかがわかり,降水予報を可能にしてくれるということです。

(c) ウインドプロフアイラー(25ヶ所);

 気象レーダーより分解能の高い電波を利用したアンテナシステムで,上空に発射した電波の散乱波を受信して豪雨や豪雪などの局地的な気象災害をもたらす「湿った空気の流れ」を把握することができる観測装置です。        

衛星による気象観測>

静止衛星(ひまわり)は東経140度の上空約3万6千kmの高度から,日本上空を中心にした広範囲を監視しており,雲の分布や高さ,上空の風,地表面の温度分布や水蒸気分布などを観測し, 台風,前線,低気圧などの動きや発達の様子を送り続けています。

静止衛星の高度,約3万6千kmには,図2.に示すように,GOES(米国), METEOSAT(欧州気象衛星機構), GOEM(ロシア)など世界中の気象衛星や実用衛星が,決まった経度線に沿って回っています。

静止気象衛星のほかに, 高度約850〜1200km,周期約100分で地球を南北に回りながら気象観測を行っている米国の極軌道衛星(NOAA)とロシアの極軌道衛星(METEOR) があります。日本では,米国の極軌道衛星(NOAA)が観測している,日本上空付近の気温と水蒸気の垂直分布や,海水温度などのデータを受信し,活用しています。

 (3)天気図にあらわれる気圧配置の"名称"と前線・低気圧

<気象現象の空間的スケールと寿命

 気象現象は天気図だけから予測できそうですが,それほど単純ではありません。気象現象といってもさまざまで ,例えば,低気圧の直径は数百キロメートルもあり,発生から消滅までの寿命も数日以上あるのに,竜巻などは直径数百メートルで,寿命もせいぜい数十分に過ぎません。いろいろな気象現象について調べてみると,空間スケールと寿命との間には次のような比例関係があることがわかって います(図3.1)。

    寿命(時間)=0.3×空間スケール(km)

 したがって,高気圧,低気圧,前線,台風のような,空間的にも,時間的にもスケールの大きい気象現象については,1日数回の天気図からでも予測することが可能ですが, スケールの小さい竜巻や,降雨域・降水量を天気図から予測することは非常に困難です。降水に関する予測では,雨雲を直接観測するレーダーが非常に重要な役割を果た しているように,気圧配置から予測するのではなく,降水現象を直接観測することによって予測しているのです。台風については,発生するのが赤道付近なので,日本付近だけでなく,赤道付近まで含んだ広域の天気図が必要になるので,外国の気象データや,静止気象衛星・極軌道気象衛星による観測 も不可欠になってくるのです。

<天気図にあらわれる代表的な気圧配置と"名称">

 日本付近に,高気圧や低気圧があったときの代表的な天気図を示したのが図3.2です。高気圧は,まわりより気圧の高い地域で,低気圧はまわりより気圧の低い地域ですが,必ず閉じた等圧線で表されます。図3.2の左下に『低圧部』とあるのは,気圧は周囲より低い地域ですが等圧線は閉じていません。

  図3.2に赤い線で示した『気圧の谷』は,2つの高気圧の間で気圧がもっとも低くなっている地域で,両方の高気圧から吹き出す気流が収束するところで,『収束帯』と呼ばれ,雲が発生しやすい 地域です。『気圧の嶺(尾根)』は,気圧の高い地域が山の嶺(尾根)のように細長く伸びて いるところで,空気は流れ出しやすく,好天が期待される地域です。  

<天気図にあらわれるいろいろな前線>

 寒気と暖気の境界が『前線面』で,『前線面』が地上に達したところを『前線』と呼んでいます。『前線』には,『寒冷前線』,『温暖前線』,『閉塞前線』,『停滞前線』があります が,前の3つは前線の構造の違いによる名称ですが,『停滞前線』は字のごとく長い間停滞する前線という意味での名称です。『停滞前線』を除いた3つの前線について説明しておきます。

『寒冷前線』寒気が暖気の下にもぐりこんで,暖気を押し上げながら暖気側に侵入してくるのが『寒冷前線』です。図3.3 に模式的に示したように, 寒気と暖気の境界面は70分の1から200分の1の傾斜となり,前線付近の比較的狭い範囲で積乱雲が発生するといわれています。前線通過時には,暖かい空気から冷たい空気へと変わるので気温や湿度 は低下し,積乱雲からの強い降水や突風,雷を伴うこともあります。

『温暖前線』;暖気が寒気の上を滑昇しながら,寒気を押しのけるように寒気側に移動するのが『温暖前線』です。図3.4に模式的に示したように, 暖気と寒気の境界面は200〜300分の1程度のゆるやかな傾斜なので,寒冷前線よりも広い範囲で上昇気流が発生するため,前線付近の広い範囲で乱層雲や高層雲からの雨が降る


『閉塞前線』;低気圧が発達してくると,『寒冷前線』が『温暖前線』に追いつき,図3.5に示したように,『寒冷前線』の背面の寒気Aと『温暖前線』の前方の寒気Bとが接し,暖気は地上から上方へと押しやられてしまいます。このような状態になった前線が,『閉塞前線』です。図3.5では寒気Aが寒気Bの下にもぐりこむケースで書いてありますが,これは寒気Aの方が寒気Bより冷たい場合に対応しています 。逆の場合には,寒気Aは寒気Bの上に這い上がるように移動することになります。

      

   (4)天気予報の種類

 現在,気象庁から発表されている天気予報の種類を表3に示しました。 なお,下記のサイト;『天気予報ができるまで』

 

をクリックし,『天気予報の種類や気象情報について説明します』を選択すると,『明日・明後日の予報』,『週間予報』,『季節予報』,『注意報・警報』,『気象情報』,『海上予報』,『空港予報』,『台風予報』についての説明を見ることができます。 続いて,<Back『 前のページに戻る』>をクリックすると,『天気予報 がどのようにつくられているか説明します』のページに移動します。参考にしてください。上のサイトでは,天気予報の基本になる観測についても説明してあり,参考になります。

                    表3 天気予報の種類

天気予報 予報発表時から明後日までの天気,風,最高気温・最低気温,降水確率などの予報。
週間天気予報 翌日から7日間の毎日の天気,最高・最低気温,降水量などの概括的な予報。 略称は「週間予報」。
季節予報(長期予報) 1か月,3か月および暖候期(春から初秋),寒候期(秋から春先)の気温,降水量などの概括的な予報。
季節予報における確率表現 季節予報における確率予報では「低い(少ない)」,「平年並」,「高い(多い)」の3つの階級(3階級表現)について,れぞれの予想される確率を表現している。
気候予報 季節予報を含み,更にそれより長い1年ないしそれ以上の予報。
降水短時間予報 日本全国について1時間降水量を5km格子単位で6時間先までの予報。レ−ダ−とアメダスで観測された降水量分布に数値予報の資料を加えて作成した降水短時間予報を天気予報の一部として発表している。
地域時系列予報 府県の代表的な地域または地点の天気,気温,風を3時間単位で24時間先(18時発表は30時間先)まで予報するもの。
天気は,予報対象地点を含む分布予報の1格子内の天気を晴,曇,雨,雪のいずれかで示す。
気温は,予報対象地点の3時間ごとの気温を1℃単位で示す。
風は,予報対象地点の3時間ごとの風を,風速ついては2m/s以下,3〜5m/s,6〜9m/s,10m/s以上の4階級に分けて示し,風向については,8方位で表現する。風速が2m/s以下の場合 ,風向の予報は「風向なし」とする。
略称は「時系列予報」。
地方天気分布予報 地方予報区内の天気,降水量,気温,最高・最低気温,降雪量を約20km格子単位で24時間先(18時発表は30時間先)まで予報するもの。

天気は,格子内の3時間毎の代表的な天気を晴,曇,雨,雪のいずれかで示す。
降水量は,格子内平均の3時間平均降水量とし,降水なし,1〜4mm,5〜9mm,10mm以上の4階級で示す。
気温は,格子内の3時間毎の平均的な気温を1℃単位で示す。最高気温は9−18時の,最低気温は0−9時の格子内の平均的な最高または最低気温を1℃単位で示す。
降雪量は,格子内の6時間平均降雪量とし,降雪量なし,2cm以下,3〜5cm,6cm以上の4階級で示す。

略称は「分布予報」。

  天気予報から気候予報までは「馴染み」があると思 うので,降水短時間予報から補足説明をしておきます。気象庁のホームページを開き,「解析雨量・降水短時間予報」をクリックすると, 図4.1に示すような日本全国の降水状況の分布図が開きます。調べる地域を選ぶと, 全国あるいは地域毎の6時間先までの1時間毎の降水量予測を動画で見ることができます。これが降水短時間予報で,集中豪雨災害の防止などに利用されます。

気象庁ホームページ; 

  地域時系列予報は,テレビの天気予報の時間に,図4.2に示すような『ポイント予報』として紹介しているもので,3時間ごとの天気や気温 と風向・風速の変化を24時間先まで予報しています。

 

 

 

  地方天気予報分布は,3時間ごとの天気・降水量・気温を約20km四方ごとの分布図の形で24時間先まで予報しているものです。図4.3 に天気の例を示しましたが,仙台市青葉区の予報や,ゴルフ場の天気予報などに使用されているものです。数値予報だからこそ,可能になったものです。

     (5)季節予報にも数値予報が

 気象庁では,季節予報は平成8年3月から確率を用いて発表しています。詳しくは,下記の『季節予報とは?』のサイトを参考にしてください。1か月予報は平成8年3月から,3か月予報は平成15年3月から数値予報に基づく 「アンサンブル予報」に切り替えたのです。「アンサンブル予報」というのは,初期値にわずかなバラツキを与えて複数例の数値予報を実施することにより,その平均(アンサンブル平均)をとれば ,個々の例中の誤差同士が打ち消しあって平均的な大気の状態を予測できるという考えです。

 5.1にアンサンブル予報の例を示しました。850hPa(地上約1,500m)の気温の平年差の予測を示したもので,26本の細い実線が個々の予測結果です。黒の太い実線は26本の細い線を平均したもので,これがアンサンブル平均の予測結果です。この例では、向こう1か月間の前半は顕著な高温となり,後半は下がるが平年より高く経過すると予測されています。また,26個の予測のばらつき方は前半に比べ後半では大きくなっており,予報時間が延びると共に予測が難しくなることを示しています。なお,図の気温は7日間の移動平均であり,たとえば初期日から6日目までを平均した予測結果は3日目のところに示してあります。

 詳しくは,下記の『アンサンブル予報』のサイトを参考にしてください。

季節予報とは?   

アンサンブル予報  

災害をもたらした気象事例

 

 

 



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