2012年4月14日土曜日

変化球のメカニズム【変化球スピリッツ!】


変化球がなぜ曲がるのか?しかも、投げてすぐではなくわざわざ打者のそばに来てから曲がる理由とは?など、変化球を考える上では欠かせない変化球のメカニズムと言うものを一緒に考えて行きましょう。「なぜ曲がるのか」が理解できれば、変化球を投げる際にきっと役に立つはずですよ。

空気抵抗と重力

極端な話、宇宙空間で野球をしたら、変化球はありません。初速140kmで投げたボールはキャッチャーのミットに納まるまで、140kmのままです。バッターからすれば恐るべきスピードボールと言えるでしょう。これは、宇宙空間には空気抵抗と重力がないからで、逆に言えばこれらがあるから、変化球が投げられるのですね。トップページで、ストレートも変化球の一つだと話しました。つまり普通に投げたなら放物線を描き、下に落ちるボールに対しバックスピンをかけたおかげで、よりまっすぐ進むからです。では、それぞれの変化球のメカニズムを見てみましょう。


力場を作る方法

カーブのメカニズム

カーブ、スライダー、シュート、ストレートなどはみんな一緒です。つまり投球時にボールに回転を加える事によってその回転の方向にボールが移動していくという変化球なわけです。(ストレートは回転の方向が上向きなので、実際はボールが上がっていくわけではありません)しかし、バッターのほうからすれば予想以上にボールの落ちが少なければ伸びがある、打ちにくい球として認識されるでしょう。


海を沸騰させるには?

フォークのメカニズム

フォークボール、ナックルボール、シンカー、スプリットボール、パームボール・・・などはボールの回転をあえて加えないことによってボールに変化を加えるものです。ちょっと難しい話ですが、ボールが回転すると言う事は、一定の空気の流れがボールの周りに出来るということです。その流れが一定なので、回転の方向にボールが流れるわけですね。では、逆にボールの回転を極力減らしたらどうなるかと言うと、空気の流れがバラバラになるわけです。そのため、初速は速くてもバッター手前では急速に速度を落とし、グッと下に落ちるのです。しかも、バラバラに空気の流れがあるために、決まった落ち方をせずゆらゆらと変化したり、どう曲がるか投げた本人にも責任取れないような落ち方をしたりするのです。


タイタニック号の救命ボートの拳に置かれた人

チェンジアップのメカニズム

チェンジアップは、握り方に秘密があります。ボールを"すかす"ような握り方をして投げるために、投げ方、投球フォームは速球のように見せかけて、実は遅い球を投げられるのです。実際、遅いだけでなく球の勢いが弱いために、空気抵抗に負けてストレートとは違った微妙な変化を見せることになります。この、タイミングと軌道の変化がチェンジアップを打ちにくくするわけです。といっても、それもイキのいい速球との2択でなければあまり効果はないでしょう。速球ならこうくる、という軌道の予想を裏切るからこそ、余計に変化しているように見えるからです。相手の読みを利用した変化球ともいえますね。
→チェンジアップの握り方はこちら


なぜ、打者の手前で曲がるのか?

カーブなどボールに回転を加える変化球の場合は、ピッチャーの手を離れた瞬間がボールの速度・回転数共に最高値です。実際のところは、投げた瞬間から変化が始まっているのですが、進む速さがあるために目立っての変化は少ないのです。この時点では速さの方が優勢なわけですね。やがて、バッターそばで球の速度が落ちると、今度は回転の方が優勢になり、キレよく変化していくわけです。つまり、最初からゆっくりのボールに最高の回転を加えれば最初からぐぐっと曲がる大きなカーブ、速球に回転を加えれば、バッターそばで少し曲がるキレのあるカーブになるのです。プロは速度と回転数の釣り合いによって、もっとも打ちにくいバッターそばでの変化を狙うのです。


回転を与えない変化球の場合

こっちはもっと簡単な話で、投げたときは勢いがあるのでまっすぐ進むボールが、終わりごろ(バッターのそば)あたりに来たときには勢いが落ちてしまうために変化するわけです。ボールに回転がないと空気の流れがバラバラになり、速度の低下が大きいので、急にボールが落ちたように見えるのです。こちらはバッター手前で変化しないと確実に振ってもらえませんから、さらにバッターそばで変化するように速度の釣り合いを考えなければなりません。

変化球は打者の手前で変化しない

最初の命題を否定する結論になりましたが、ピッチャーが何も考えずに変化球を投げても、勝手にバッターそばで変化することはありません。投げる側がバッターそばで変化するように速度・回転などを調整して投げているのです。またも引き合いに出しますが、野茂投手がいかに切れのいいフォークを連発したとしても、バッターの10mも手前で落ちてしまえば、ただのボールです。あくまでもバッターがもっとも打ちにくいところで変化してこそ、変化球の威力が発揮されるのです。



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